韓国海軍が第1回ドローンサッカー大会を開催
韓国海軍作戦司令部が、釜山の海軍基地屋内体育館で第1回 海軍作戦司令官杯ドローンサッカー大会を開催しました。その様子はYouTubeショート動画で公開されており、ドローンボールが競技場を駆け抜け、兵士たちが声を掛け合いながら盛り上がる様子が伝わってきます。
大会を報じた韓国・国防ニュースの内容を和訳して引用します。
ドローンボールが速いスピードで競技場を横切ります。相手の守備をかわして円形のゴールを通過すると、歓声が沸き起こります。11日、海軍作戦司令部が釜山の海軍基地屋内体育館で第1回 海軍作戦司令官杯ドローンサッカー大会を開催しました。今回の大会は、我が軍の「50万ドローン戦士養成計画」の一環として、将兵のドローン活用能力を高め、サークル活動を通じた活気ある兵役文化を醸成しようと設けられました。
ドローンサッカーは、横8m・縦4m・高さ3mの競技場で、丸いプラスチック製の外骨格に囲まれたドローンボールを使い、相手チームのゴールを通過させて得点する競技で、操縦の熟練度とチームワークが重要なスポーツです。大会には、海軍作戦司令部隷下の海軍ドローン戦士部隊の9つのサークルから選手団63名が全国から集まり、これまで磨いてきた実力を発揮しました。部隊は今後も、有人・無人複合体系に基づく未来の海洋戦争を先導する専門人材を育成するため、多様なプログラムを継続的に拡大していく計画です。(国防ニュース)
使用機体と「50万ドローン戦士養成」政策
大会で使われているのは、韓国CAMTECH社のドローン「Skykick Evo」であることがわかります。これは韓国国防部が掲げる「50万ドローン戦士養成」政策の一環として実施されたもので、兵士教育に最先端の取り組みを広く導入しようとする姿勢の表れと言えます。
動画コメント欄の反応
動画のコメント欄には、次のような声が見られます。
「未来の韓国!」
「兵士の専門教育が必要だ」
「まさか中国産で競技しているのではないだろうな?」
韓国海軍の兵士教育に期待する声がある一方、機体の製造元を懸念するコメントもあります。実際、使用されているSkykick Evoは中国で製造されている機体です。
ドローンサッカーが兵士教育に向いている点
ドローンサッカーには、兵士教育に適した要素がいくつもあります。戦略やチームワークを学ぶことは、兵士同士の絆を深めます。また、どのスティックがどの動きに対応するかといったドローンの初歩的な操作を、安全に学ぶことができます。目視内での飛行であり、ネット(保護フェンス)の中で行うため、(日本の例で言えば)電波の免許も不要で、航空法の規制も受けません。
【考察】この動画から見える教育面の課題
一方で、教育という観点では次の点が懸念されます。使用されているSkykick Evoは初心者向けのブラシモーター機で、ほとんど改造できません。入門には良いものの、ドローンを深く理解するには向いていない機体です。
修理といってもプロペラやモーターの交換程度の知識しか養われず、ブラシモーターは配線が決まっていて、時計回りか反時計回りかの違いしかありません。また、初心者向けに気圧センサーを使用しますが、肝心のFPVドローンには気圧センサーがないため、発展性は弱いと言えます。
兵士の実践的な教育に必要なもの
最初の練習はブラシモーター機のSkykickでも良いでしょうが、スティックの役割を覚える程度にとどまります。より複雑で戦術的な40cmクラスのブラシレスモーター機、LiPoバッテリーの取り扱い、フライトコントローラーやESCの違い、PID設定、配線、複雑な修理を想定した内容を導入しなければ、単に遊んでいるだけになりかねません。Skykick Evoでは、こうした内容を学ぶことができません。
【課題】単なる実績づくりで終わらないために
「ドローン教育を導入した」という実績だけで終わってしまうことが懸念されます。このままでは、海軍のドローン運用に本当に使える知識・経験・能力を培うのは難しいでしょう。より大きな機体を飛ばすブラシレスモーター機を学ばなければ、実践的とは言い難いと考えます。
ロシア・ウクライナ戦争ではドローンの活用が大きく取り上げられ、前線で故障したドローンをその場にあるもので修理して使い続ける様子も数多く見られます。これには、ドローンに関する基礎的かつ応用可能な知識・経験が欠かせません。
FIDA系よりFAI F9A系が教育に適する理由
Skykickに縛られた韓国のFIDA系ドローンサッカーより、オリンピックムーブメントと関わりのあるFAI F9A系ドローンサッカーのほうが、教育には向いていると考えられます。
ブラシレスモーターが主流
FAI F9Aドローンサッカーは、小型の20cm機(Skykickと同じサイズ)でもブラシレスモーター機を使います。修理などを通じて高度な知識を学べ、各チームがさまざまな設定変更を行えます。どの設定を変えると挙動がどう変わるかを、実地で学ぶことができます。
メーカー選定が自由
20cm機も40cm機も、特定メーカーに縛られることがありません。国産メーカーの部品にこだわることも可能です。なお、これらはあくまで教育用であり実戦兵器ではなく、各部品はインターネット通信を行わないため、たとえ中国製であっても部品そのものに問題はないでしょう。
まとめ ― 日本はどうする?
ドローンサッカーを兵士に学ばせる取り組みは、兵士教育に最先端のものを広く導入しようとする姿勢の表れだと思います。しかし、その導入の仕方には懸念もあります。世界各国では、兵士や警察などがFAI F9Aドローンサッカーを導入し、その教育性の高さからドローン運用の基礎を身につけているようです。さて、日本はどうでしょうか。
